僕は決してTV中毒ではないが、今から6年前のゴールデンウィークは、全く外出せずに朝から晩まで、あるTVドラマの録画を観まくっていた。それが『glee / グリー』だった。
全く年甲斐のない話だが、僕はこの青春ミュージカルコメディーにハマってしまったのだ。
2009年に米国 FOX によって始まったこのドラマは、2015年まで全6シーズン、121話が放送されたが、開始直後から瞬く間に世界中で大ヒットとなった。
観たことのない人のために簡単に説明すると、オハイオ州にある架空の学校、マッキンリー高校を舞台に、かつて同校のグリークラブ(合唱部)の部員だった教師のウィルが、部の復活を懸けて個性派揃いの生徒たちと共に全国大会優勝を目指す… という物語だ。ストーリー自体は、日本人にとっては全くもって現実味のない、いかにもの米国ドラマなのだが、このドラマの主役はあくまで音楽だ(と僕は思っている)。
『glee / グリー』ではその名の通り、ミュージカルシーンがふんだんに登場する。ポップスを中心に新旧のヒット曲がカバーされているが、注目すべきは「どんな曲が取り上げられたか」、そして「どんな風にリメイクされたか」である。
このドラマからは多数の音楽作品がリリースされ、207曲のカバーシングルがビルボードのHot 100(シングルチャート)にチャートインした。中でも、ドラマの節目節目で重要な役割を果たしているのが、次に挙げるような1980年代の楽曲だ。
■リック・スプリングフィールド
「ジェシーズ・ガール」
■ザ・ローリング・ストーンズ「スタート・ミー・アップ」とボン・ジョヴィ「リヴィン・オン・ア・プレイヤー」のマッシュアップ
■ボニー・タイラー
「愛のかげり(Total Eclipse Of The Heart)」
■ライオネル・リッチー
「ハロー」
■カトリーナとザ・ウェーブズ
「ウォーキング・オン・サンシャイン」(ビヨンセ「ヘイロー(Halo)」とのマッシュアップ)
■ビル・メドレー&ジェニファー・ウォーンズ
「タイム・オブ・マイ・ライフ」
■マドンナ
「ライク・ア・プレイヤー」
こうした80年代のヒット曲が “スタンダード” たり得ることを証明したことも、『glee / グリー』の成果の一つだと思うが、その中で、このドラマの恩恵を最も受けたのがジャーニーだろう。
ドラマの中で彼らの楽曲は4曲がカバーされたが、中でも「ドント・ストップ・ビリーヴィン」は、シーズン1の初回に披露されて以来、計7回も登場し、事実上『glee / グリー』のテーマソングとなった。そして、90年代から2000年代にかけて長く低迷していたこのバンドは、これを機に2回目の全盛期を迎えることになる。
また、『glee / グリー』のカバー曲の中には、原曲よりカッコいいんじゃないかと思えるバージョンも存在する。例えば、シーズン3でマイケル・ジャクソンの「スムーズ・クリミナル」がカバーされたが、これがまたクールだった。
このバージョンでは2CELLOS(トゥー・チェロズ)が登場するが、彼らの貢献が大きい。「2本のチェロによる超絶演奏で世界を魅了するクロアチア出身のチェロデュオ」と紹介されることが多い彼らのサウンドが、何とも言えない緊張感を生み出している。
… とまぁ、ここでは語り尽くせないが、とにかく『glee / グリー』は80年代の音楽を愛してやまないリマインダー世代こそが観るべきドラマなのである。
2018.06.06
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